首里の夜

今年の3月に三日間ほど、沖縄で過ごした。
今回は那覇の中心部ではなく、首里のペンションに宿をとった。
3月の那覇は既に気温が高く、夕方も上着を着ずに歩ける。宿から近い儀保首里周辺を歩くと、夕方の街からは、海沿いの街特有の開放的な空気が感じられる。
首里は高台にあるため、そこから那覇市内を一望することができる。緑の多い、無秩序に作られたような街の様子をみると、ベトナムのダラットや、映像で見た中南米の海辺の街のような印象を受ける。
夜、宿で夕食を食べながら、ペンションのおばさんの話を聞く。
那覇はいま、人口流入が激しいらしい。その要因は、原発事故による、内地、とくに福島からの避難者だ。東京や名古屋でもホットスポットが確認されるいま、小さい子どもを持つ家族は、沖縄にまで避難している。
その数は、もうすぐ1,000人に達し、すでに福島出身者どうしのコミュニティーも形成されている。
風呂にはいった後、ベランダでドリンクを飲みながら、本を読む。ベランダの一部が道路に面しているため、遅い時間までひっきりなしに車のエンジン音が聞こえる。なまあたたかさの残る夜に聞くその音からは、南国にいるここちよさが感じられた。