『写真美術館へようこそ』 飯沢耕太郎

2009/3/5読了
写真の誕生から始まり、各時代の名作をテーマごとに見ていく、という構成となっています。
このような本では、写真史の流れを覚える、というよりは、興味のある写真家や作品を見つけ、それをじっくりと味わうきっかけとする、という読み方が面白いのではないかと思います。
そのような意味で、私が惹かれた写真家は、フランスのジャン=ウジェーヌ=オーギュスト・アジェです。
著者はこの写真家の作品を次のように評しています。

アジェの眼は都市という“生きもの”のあらゆる部分に向けられていました。建物や街路の外観はもちろんのこと、部屋のインテリア、装飾物なども丁寧にカメラにおさめています。一種の職業尽くしのように、街頭の物売りを一人一人記録したシリーズもあります。パリだけでなく郊外の農村地帯にも足を伸ばし、みずみずしい樹木や水辺の写真も撮影しました。
彼は一種のコレクションの情熱にとり憑かれていたといえるかもしれない。同時代のパリの全体像を、写真を使ってジグソーパズルのように組み上げようとする情熱です。(126)

私もかつて、東京の街をひとつひとつコレクションするように歩いていたことがありました。今であれば、小さなカメラを持って、それらの様相を写してまわる、そのような街歩きも楽しいかもしれません。

写真美術館へようこそ (講談社現代新書)

写真美術館へようこそ (講談社現代新書)