小説

『ここは退屈迎えに来て』

3月2日に読了。 90年代後半から2010年あたりまでの、日本の地方の日常を切り取ったようなお話。 ポーター、ハイテクスニーカー、無印の家具、二つ折り携帯、ショッピングセンター・・・。 著者が自分と同い年のせいか、登場してくるガジェットが懐かしい。 …

『クォンタム・ファミリーズ』 東浩紀

2011/2/12読了 ここ数年、この本の著者の発言や著述を見てきたが、数年来考えられてきた内容が結実された作品であると思えた。それらは「別のようでありえた未来」や「近未来予想」や「郊外の変容・ショッピングモールの描写」や「思想界、ネット論壇の戯画…

プレーンソング/保坂和志

2009/1/29読了 大きな出来事は起こらず、主人公の日常で起こること、その時の主人公の「意識の流れ」を描いていると思います。ただ、それをこの小説が発表された一九九〇の言葉で、その空気の中で描いたことに、この小説の特徴があると思います。 作者は別の…

聖家族/古川日出男

東北を舞台に、ある一族のさまざまな人物を中心にした、近代・現代が語られます。その語りの中で、作者は、正史・偽史のゆらぎや現代の歴史化を試しみているように思えます。 たとえば、『「見えない大学」付属図書館』では、「記録に合わせて現実を修正する…

キャラクターズ/東浩紀 桜坂洋

2008/9/16-10/2 小説の形をとっているが、その中で作者たちの虚構や小説に関する考えが述べられている。 ・世の中は変化しているように見えるが、そのシステムは案外強固で、たとえば若い作家たちは「変化しない世の中」に照準を合わせて賞を得ている。ある…

書きあぐねている人のための小説入門/保坂和志

2008/6/22-6/28 著者の小説に対する考えかた、特に著者の小説を読むにあたってポイントとなるであろうことが書いてある。大塚英志氏の『物語の体操』も同時に読んでいたが、二人の創作に関する考え方の違いが比較でき、興味深かった。 「(哲学、科学、小説…

ライトノベル「超」入門/新城カズマ

2008/6/10-6/13 数年前のライトノベルのを巡る状況や、その歴史を紹介した内容になっているが、次の“キャラクター”に関する説明が特に面白かった。 ゲーム、あるいはゲーム的な発想で、物語のエンディングが複数になり、登場人物は葛藤も決断もしていない場…

好き好き大好き超愛してる。/舞城王太郎

2007/11/10-11/17 「「私も治のことが好きだった」と柿緒は言って、僕も、そして柿緒も、それが過去形で言われたことにすぐ気付く。その気付きは稲光みたいに僕と柿緒のその瞬間を照らす。 僕は「どうして過去形なんだよ」と軽くツッコみたかった。でもここ…