フローラ逍遥/澁澤龍彦

2008/2/29-3/18
二十五の花々について、著者の眼や記憶を通したエッセイがつづられている。
生前公刊された最後の作品であり、著者も自身の死を意識していたのかもしれない。そのせいもあってか、全編がどこか達観したような、乾いた筆致となっている。
妻であった澁澤龍子氏は、著者の作品では『フローラ逍遥』がいちばん好きだと言っており、『澁澤龍彦との日々』で次のように記している。
「とくに悲しいことが書いてあるわけではないのですが、読んでいると涙が出てくるような作品です。短いものですが、澁澤のそれまでの蓄積から、蒸留水のようなもっともきれいなものだけが滴りおちて形になった、そんな透明感のある文章がとても好きなのです。」(『澁澤龍彦との日々』(200))