愛の昼下がり/エリック・ロメール

2008/6/27
主人公フレデリックは、美人の妻と子供に恵まれながら、結婚以来妻以外のあらゆる女性が魅力的に見えてしまう。そんな中、旧友のクロエと出会い恋仲になる。しかし、一線を超える手前で彼は思いとどまり、妻の元へと帰ってゆく。
クロエとの会話の中で、フレデリックは妻とは真面目な話しかできず、その関係に物足りなさを感じていることを伝えている。そのような夫婦関係の中で、妻とはできない話が気軽にできるクロエとの間柄は、風通しが良いものであっただろう。しかしそれが恋愛に発展し、現在の家庭に破局をもたらすものになったとき、初めて彼は、ある意味でよそよそしい妻との仲にはじめて魅力を感じるのだ。
最後の場面で、夫婦はお互いの愛情を確認しあい、ともに泣き崩れる。このシーンは二人の間にある壁が氷解したことを意味しているのではない。むしろ、一定の距離を持った関係が、彼らの夫婦関係としては望ましいものであり、それを悟ったことの感動を表わしていると読み取ることができた。