マンハッタン/ウディ・アレン

2007/9/16
アレン扮する主人公のアイザックはTVライターから小説家に転向しようと思案中。そんな中、妻のジルが彼との生活を暴露しようと本を出版する。この危機にある夫婦に加えて、彼の浮気相手の高校生・トレーシーや大学教授夫妻が絡む人間模様が、ニューヨークの街を舞台に展開する。
ニューヨークという大都市の撮り方が素晴らしい作品。オープニングは『ラプソディー・イン・ブルー』とともに、ニューヨークの街の様子が映し出される。演出としてはベタなのだが、それだけにシンプルな格好良さがある。また、アイザックハドソン川にかかる橋をバックに女性と歩くシーンや、高校生の浮気相手と馬車に乗りながら、高層ビルの下夜の街をデートするシーンなど、演じる人間が背景となる街を引き立たせているかのような印象を受ける。それと同時に、この映画が撮影された三十年前の雰囲気は、いまのニューヨークには残っていないだろう事も、確信めいて感じられ、その感傷は映画の白黒の擬似ノスタルジックな画面と相俟って、一抹の寂しさを感じさせる。