人類の星の時間/ツヴァイク

2008/1/5-1/24
人類史に決定的な影響を及ぼした「星の時間」たちを綴る短編集。
傑作だったのは、アメリカ―ヨーロッパに海底ケーブルを引いた男の話。
主人公サイラス・W・フィールドは二度の失敗のあと、三回目でようやくケーブル敷設に成功する。しかし、そのケーブルはすぐに使用が不可能となり、落胆の中ケーブル敷設計画はその後六年間沈黙することとなる。
六年間の間、新たな発見や技術革新がなされ、計画は再び息を吹き返す。あとはこの計画に新しいエネルギーをそそぎ込む人物さえいればよい。
「そしてその人物は突如として現われた。見よ、それはサイラス・W・フィールドその人であった。少しも変らぬ信念と信頼とをもって、彼は彼を黙殺した追放と悪意のある軽蔑とを受けていた後に復活したのである。」(263-264)
かれは一度の失敗の後、見事ケーブル敷設に成功する。
この物語の最後に作者は次のように述べている。この一節は平和主義者としての彼の人格を表わすものであろう。
「この瞬間以後地球は、いわばおなじただ一つの心臓の鼓動を持つ。たがいに聞き、たがいに見、たがいに理解し合って人類は今や、地球の一つの端から他の端までが同時的に現存し、人類自身の創造力によって神のように遍在する。この大きな一致を絶えず破壊しようとする不吉な狂気、――そして自然の諸要素を支配する力を人類に与えているそのおなじ手段を使って人類自身を破滅させるような不吉な狂気に、くり返して人類が混乱させられることなく、空間と時間とを超える人類の勝利のおかげで今後常に一致結合するならどんなにすばらしいことだろう。」(265)