須賀敦子全集 第2巻

2008/9/21-10/19
ヴェネツィアの宿』と『エッセイ/1957〜1992』の一部を読む。
ヴェネツィアの宿』では筆者の留学時代の話や少女時代のエピソードを、父親に対する思いと絡めながら追想する。当時のイタリアやフランスの人びとの生活や、留学生たちの様子が興味深く描かれる。過去への追憶という形をとっているせいか、読みながら自分自身の子供時代を思い出してしまうような、心地よい時間を過ごせた。
『エッセイ/1957〜1992』では、翻訳やイタリアの都市のことなど雑多な話題が書かれているが、特に次のフィレンツェに関するエピソードが気に入った。「ルネサンスの文学作品を読むとき、ふと、フィレンツェの道路や建築から教えられた感覚がよみがえることがある、それまで見えなかったものが、それまで何度も読んでいたものが、まったくあたらしい本、まったくあたらしい文章にみえてくる。文章というのは、かなりそれが書かれた時代に似ているものである。内容だけでなくて、文の組みたて具合、といったものが、同時代の建物や道路の配置によく似ていることがある。わざと、それに反対して、つくられていることもあるが。」(554)