『現代思想の冒険者たちSelect レヴィ=ストロース』 渡辺公三 2/2

本の主な内容は、前回の記事にまとめたとおりです。
昨年『悲しい熱帯』を再読した際、最後に記述された主張がつかみきれず、もどかしい思いをしました。今回、著者の解釈するレヴィ=ストロースの思想に触れたことで、その意味が少し理解できた気がします。
『悲しい熱帯』は、次の記述で終わっています。

生にとって掛け替えのない解脱の機会、それは――さらば野蛮人よ!さらば旅よ!――、われわれの種がその蜜蜂の勤労を中断することに耐える僅かの間隙に、われわれの種がかつてあり、引き続きあるものの本質を思考の此岸、社会の彼岸に捉えることに存している。われわれの作り出したあらゆるものよりも美しい一片の鉱物に見入りながら。百合の花の奥に匂う、われわれの書物よりもさらに学殖豊かな香りのうちに。あるいはまた、ふと心が通い合って、折々一匹の猫とのあいだにも交わすことがある、忍耐と、静穏と、互いの赦しの重い瞬きのうちに。

ここに記述された自然種との交流、これこそがレヴィ=ストロースが直感した「野生の思考」だったのではないでしょうか。
それは、彼の構造主義が、決して静的な冷たいものではなく、人と世界、いや宇宙の交流までも射程に含む、豊かな、あたたかい思想であることを告げているように思えます。