エッセイ

サンクト・ペテルブルグ/小町文雄

2007/2/17-2/24 「自国の文化と生活の伝統を重視し、絵画を通した国民啓蒙を目指した移動展覧派が結成されたころは、すでに農奴解放例が出されており、農民啓蒙をめざすナロードニキ運動のグループが活動するなど、社会改革の意識と運動はかなり広がっていた…

記憶の遠近法/澁澤龍彦

2007/2/7-2/24 「幼少時の思い出は、なにか暗い闇の中に一点、ぼうっと明るんだ、にぎやかな光の空間があって、それを遠くから見ているような感覚を私にいだかせる。それは一種の祭りの空間であって、そこに自分も参加しているはずなのだ。ハーゲンベック動…

私のプリニウス/澁澤龍彦

2007/2/6読了 「なんといってもアネモネの魅力の第一は、私の思うのに、風を意味するギリシア語アネモスから由来している、その言葉のひびきの美しさであろう。(中略)なぜアネモネがとくに風と関係づけられるようになったのか、神話の説明を読んでもよく分…

街道をゆく「沖縄・先島への道」/司馬遼太郎

2007/1/26読了 「古代の漢民族は、自分たちと他者を区別するのに敏感だった。かれらは、ある種の風体と、肉体的特徴と、そして非漢民族的な生産文化を持った連中を指して、倭とか倭人とかと称した。この呼称のほうがずっと気楽で、これを称するだけで、精神…

街道をゆく「大徳寺散歩」/司馬遼太郎

2007/1/24読了 「(清潔と美の)二つの意味において大徳寺境内は伊勢神宮とならぶきれいさといっていい。もっとも、伊勢神宮の場合、清潔を主題としてその空間ができあがっているのに対し、大徳寺は、本来ごたごたした仏教寺院を、掃ききよめ、洗いきよめる…

ホメロスを楽しむために/阿刀田高

2006/12/23読了 「人間達は悩み、問いかけ、祈り、そして努力をする。計り知れない神の意志に翻弄されながら、どのようにして自分の、人間としての倫理を確立するか。避けることのできない死をどう迎えるか。二つの叙事詩には、神々の気紛れにもまれながら葛…

滞欧日記/澁澤龍彦

2006/12/23読了 「スペインへ来て気がついたこと。方輪者、めくら、足なえ、いざり等多し。道ばたに立っている。新聞売り。 乞食。押売り。客引き」(81) 「たしかにヴェニスは、安ピカ物の古びた、大時代的な感じの町である。骨董屋多し。何軒か、ひやかして…

「旅する哲学」/アラン・ド・ボトン

2006/11/29読了 「わたしは片隅に坐ったまま、チョコレート・フィンガーを食べ、ときどきオレンジ・ジュースを飲む。私は孤独だったが、このときだけは、穏やかな、心地よくさえある孤独だった。それというのも、笑いと友情の背景に溶け込もうとしたら、私の…

夢の宇宙史/澁澤龍彦

2006/11/28読了 「機械は、少なくとも新時代の発端においては、自然の活動する生き生きした姿に対抗し得るような、自立的な精神世界が存在しうるということの証拠であり、矛盾に満ちた生のままの自然現象よりも、はるかに分別があり、合理的に身を処すること…

秘密結社の手帖/澁澤龍彦

2006/10/13読了 「あらゆる時代に、儀式の秘密を所有することによって、俗世間の人間のあいだから自分を区別しようと努力した人たちがいたのである。そういう人たちが集まって、小さな集団をつくる。その方法は様々に違っていても、この秘密に一つの制度とし…