『新編・琉球弧の視点から』 島尾敏雄

2009/4/4読了
著者の発案による、「琉球弧」という考え、及び奄美や沖縄で感じた印象がつづられています。

ぼくは日本の中に、ある固さが感じられて、それから抜け出したいというような気がしている。どういう形だといわれると、これもちょっと困るんですけどね。ところが奄美に行ったら、本土でいやだと思っていたそういう固さがないんです。さっきも、あいまいにやわらかさなんて言いましたけども、それは何だろうかと思ったわけです。
簡単に日本じゃないとは言いきれない。本土には無いものであるのに、ぼくの感じではまったく日本なんですから、日本以外の何ものでのないという感じがしたわけです。まあ別にどうしても日本である必要もないんですが、感じとしてはどうしても日本です。そうすると、表面的には隠れているようにみえる、日本が持っているもう一つの面があるんじゃないかと思ったんです。で、その面をヤポネシアとよんだわけなんです。(『回帰の想念・ヤポネシア』(101-102))

このほか、沖縄の芝居小屋で感じた印象や、那覇の街の様子(白い家々の街)が述べられています。著者独特の視点の面白さは感じますが、全体的に、前時代的な印象を受けました。じっさい、今の那覇奄美、あるいは八重山で、著者のような視点から街並みを見ることに、どのくらいの実効性が残っているのだろうか、と感じたりもしてしまうのです。

新編・琉球弧の視点から (朝日文庫)

新編・琉球弧の視点から (朝日文庫)