Setouchi 2016 1/3

 深夜バスは、23時に名古屋駅前を出た。木曜日の夜ということもあり、そして度重なる事故のせいもあり、乗客は定員の3割程度しかいない。
 バスは早朝5時に徳島駅前に到着。それ以降、降車する高松までの1時間半、車内から外の風景を見て過ごす。市街地を通り過ぎてしばらくすると、バスは四国山地に入る。朝日のもと、鬱蒼とした照葉樹林の緑が明るい。かつてマレーシアや台湾で見たような風景。南国に来たんだな、と思う。
 今回の目的は、瀬戸内トリエンナーレ。まずは、最初の目的地である男木島(おぎしま)へ。8時に高松を出港するフェリーはすでに人でいっぱい。9時前に島に到着する。海が近いため、朝から日差しがまぶしい。
 まだ、会場前の展示場が多いため、歩いて島を一周する。途中、島の人とあいさつを交わす。「どこから来たの」などと聞かれる。
 トリエンナーレのガイドブックを見ながら島を巡ったが、現代美術の知識が少ないせいか、アーティストの名前はほとんど知らない。それだけに、純粋に作品を楽しむことができる。特にこの島では、普通の街並みのなかに、宝探しのように、突然作品が現われてくることが多い。それは、「思想を表現するもの」というよりは、「日常を楽しくするもの」といった感じがする。
 たとえば、日本の妖怪は、私たちが住む生活空間の中に、さりげなく潜んでいる。それは、恐ろしいものではなく、どこか愛らしく生活に刺激を与えてくれるもの。
 男木島では、そのようなものとして、芸術がとらえ直されていると思えた。
 昼過ぎに高松港に戻る。少し休んだ後、高松市内を歩く。港町らしく開放的な雰囲気。市立美術館のヤノベケンジ展へ。原子力、そして震災をテーマとしたものが多い。