Setouchi 2016 3/3

 最終日は、豊島へ。ここではクリスチャン・ボルタンスキーの作品が別格。「ささやきの森」「心臓音のアーカイブ」の2作品が展示されている。どちらも現在進行形で生成され続けている作品。
 「心臓音」は世界中の人びとの鼓動を録音するプロジェクト。それを、再生する空間やPCでの音の検索、また録音ルームを含め、一つの作品となっている。心臓音という有機的なテーマを扱いながら、展示している建築自体はモダンで無機質なところもおもしろい。
 「ささやき」は、島の森の中にある作品。数百の風鈴を、長さの異なる真鍮製の棒の先につけ、それぞれの風鈴には短冊のようなプレートが付いている。鑑賞者は5000円の登録料を支払えば、プレートに大切な人の名前を記すことができる。作者によれば、一人ひとりの大切な人がまつられる、聖地を作ることが、この作品の目的だという。
 現代芸術というと、作品によっては、頭で考えすぎたような作品に出逢うことも少なくない。しかし、ボルタンスキー氏の作品は、それなりの資金をかけて作品の規模を大きくし、さらにロマンティックな思想を加えることで、他の展示以上に、作品を心に残るものとしていた。
 旅のおわり、豊島から岡山の宇部港に向かうフェリーから、瀬戸内の島々を眺める。瀬戸内を訪れたのは15年ぶり。変わらない島の風景を眺めながら、自分は15年分きちんと成長できているのだろうか、などと考えたりもした。