バーンスタインのブラームス(交響曲第一番)

交響曲不毛の30年の後、ブラームスが26年かけて作り上げたというこの曲。以前の交響曲では見られなかった和声が頻繁にあらわれることで、堂々とした中にもやわらかい音楽が感じられる。
また、いわゆる循環構造を意識して聴けば、全曲のキーとなるC、Cis、D以外にも、各楽章に似たモチーフが頻出していることが分かる。
そして、有名な第4楽章の主題。バーンスタイン指揮によるこの演奏からは、ベートーヴェン以降、シューベルトシューマンらによる模索が、この主題への着地により乗り越えられたかのような、確信めいたものが聴き取れる。
とくに、主題の前半部では、低音のピチカートに沿って、弦楽器次いで木管楽器により旋律が奏でられ、それは教会で聴くコラールのような美しさがある。
なお、この作品はバーンスタイン版以外に、金聖響氏の指揮でも聴いた。当時と同じ編成のオーケストラで、楽譜に忠実な金氏の版は、各パートの音がクリアに聞こえる演奏となっており、理知的なおもしろさがあった。しかし、ブラームスの物語を奏でるようなバーンスタインのほうが、音楽から受ける感動は大きかったと思える。