ムラヴィンスキーのチャイコフスキー(交響曲第四番)

チャイコフスキーの傑作群となる、後期三部作の1作目。今までは第三番まではバーンスタイン版で聴いてきたが、ここからはムラヴィンスキー版で鑑賞。
傑作と呼ばれる作品だけあって、前作までとくらべ、オーケストレーションの洗練度はぐっと増した印象。また、曲の展開に物語的な要素が強くなるもの、この作品から。
例えば、第一楽章、第二楽章は運命や芸術家の苦悩といった、重苦しいテーマが奏でられる。第三楽章ではその苦悩が夢幻的なものに変化し、そこにグラデーションのように民衆的なサウンドが加わる。第四楽章は全編が民族色に彩られ、民衆による苦悩からの解放が高らかに告げられる。チャイコフスキー自身による解説を経ずしても、音楽の構成は極めてわかりやすい。
そして、この構成は、ベートーベン的なものとは違った力を、私たちに感じさせる。ベートーベンのそれは、苦悩に打ち勝つ高らかな勝利、あるいは英雄的な勝利というべきもの。チャイコフスキーの音楽からは、苦悩を吹きとばす民衆のエネルギーが感じられる。
最終楽章では、第一楽章で作曲家を襲う運命の戦慄が奏でられる。しかし、民衆の力強さのまえで、それは何と力なく響くことか。英雄的なベートーベンと民衆の中のチャイコフスキー。苦しみからの解決のあり方はそれぞれだと思うが、私はこの交響曲の持つ、民衆的な、俗っぽい力強さを採りたい。

チャイコフスキー:交響曲第4-6番

チャイコフスキー:交響曲第4-6番