アシュケナージのショパン(夜想曲全集)

まさに「丁寧」という言葉がぴったりの、アシュケナージによるノクターン。感傷的に陥ることなく、むしろ理知的に、一音一音を大切に響かせ、音そのものに思想を持たせているかのような演奏。
それにより、<第二番>のようなきわめて通俗的な作品ですら、生まれ変わったそうな清廉なものとなる。また、ショパンの音楽が装飾音にいかに重きをおいているかも、この演奏によりあらためて気づかされる。
作品番号が進むにつれ、サロン音楽であったノクターンがジャンルの枠をつき破り、ショパン独自の音楽に変容していく過程が見てとれる。その経過は、凄みすら感じられるものだが、これもアシュケナージの解釈によるものだろう。
作品と演奏者の幸福な結合、思わずそのような言葉が浮かぶ曲集だった。

ショパン:夜想曲全集

ショパン:夜想曲全集