ツィマーマンのショパン(ピアノ協奏曲第1番、第2番)

ツィマーマンが自らポーランド祝祭管弦楽団を組織し、録音した作品。1999年の録音というから、クラシック音楽の「名盤」と言われるものの中では、かなり新しい部類に入るだろう。
私自身はショパンの協奏曲にはほとんど触れたことはない。それでも、一聴し、「ショパンの音楽ではないみたい」と感じた。まず、純粋に一つの音楽として感動的。また、各楽章の性格づけもくっきりしていてわかりやすい。
この盤はかなり評価が高いらしく、インターネット内でも絶賛するコメントが見られる。なぜこれだけの評価を得ているかについて、金聖響氏の以下の発言が腑に落ちるものであった。

これは、全体のテンポがかなり遅かったり、部分的に早くなったりして、オーケストラ全体が自在にテンポを動かした演奏になっていて、なるほど、こうすればうまく演奏できるんだから、最初からショパンが、こんなふうに楽譜を書いてくれていたらよかったのに……とも思える演奏です。そういう了解事項をオーケストラのメンバー全員と確認し、長い期間の練習を重ね、妥協をせずにショパンの残した楽譜そのものから意図を読みとればこうなる、という確信を持った演奏になっています。(『ロマン派の交響曲』より)

吉田秀和氏は、このCDが発表された直後に次の文章を発表し、この作品の新しさを直感している。

いずれにしろ、このCDは演奏家の考え方に大きなところで変化が生まれてきているということを告げているように思う。楽譜の読み方、楽譜から音楽を読みとるその読みといったものを音にするその仕方に変化が生まれてきている。それは、私にわかる限り、非常に小さな単位にまでわけ入っていって、その一つ一つについて、それ独自の音楽を読み取ってくるやり方といっていいのかもしれない。(『吉田秀和作曲家論集3』より)

私は、現代の優れた芸術のありかたとして、「深い内容をわかりやすく伝える」ことが挙げられると考えている。
その意味で、この作品は、今の時代のクラシック音楽があるべき姿の、ひとつの提示であるといえるだろう。

ショパン:ピアノ協奏曲第1番・第2番

ショパン:ピアノ協奏曲第1番・第2番