第369回定期演奏会 バーゼル/名古屋フィルハーモニー交響楽団

2010/5/15

オネゲル交響曲第4番『バーゼルの喜び』

20世紀前半の作品らしく、当時のポピュラー音楽で使われているような和音や、シンコペーションの技法が用いられている。ただし、楽章が進むにつれ、曲は難解な印象を増していった。

ラヴェル:ピアノ協奏曲ト長調

10代の新進ピアニスト、北村朋幹がピアノを務める。サイドの席だったこともあり、鍵盤上の指の動きも見ることができた。
若年ということもあり、内面から滲み出る情感を表現するよりも、すぐれた技巧で勝負してくる演奏家だと感じた。ヴィルトゥオーゾとはこのような存在なのかもしれない。
作曲者のラヴェル自身が優れた演奏家であり、技術的にかなり高度なものを持っていなければ弾きこなせない曲であろう。彼のような、技術力で推し進めるような演奏は、だからこそ曲の魅力が非常に良く表現されていたと思う。

ショスタコーヴィチ交響曲第5番ニ短調 作品47

・第1楽章:モデラート―アレグロ・ノン・トロッポ
金属的なイメージの旋律。鋼鉄や戦車の描写を感じる。
・第2楽章:アレグレット
民族調のリズム。印象はどこか冷たい。
・第3楽章:ラルゴ
暗い、陰鬱な曲調。コントラバスの弦を切り裂くような低音は血、ハープの一音ずつ奏でられる弦の音は涙のモチーフか。
・第4楽章:アレグロ・ノン・トロッポ
有名なムラヴィンスキー指揮の演奏ほどではないが、テンポは速め。そして、とにかく「音」。この迫力は、録音では伝わりにくいと思う。
前月の『わが祖国』も音の迫力が物凄かったそうだが、名古屋フィルの特徴の一つは音の力強さにあるのだろうと思う。弦楽器のうごめき、管楽器の祝祭感、打楽器の進行感がひとつになり、曲の持つデモーニッシュな魅力を引き出している。