今日からデジカメ写真がうまくなる/九門易

2008/7/19-7/24
旅行に行ったときにきれいな写真をとるコツが知りたくて読んでみたが、技術的なこと以外にも、広告写真が作られるカラクリや、カメラマンと被写体・鑑賞者の関係など、写真芸術論的な内容も面白かった。
たとえば、ポートレートを撮ることについては、次のように書かれてある。
「被写体の人となりがよく表れた写真を撮ることが、人物撮影の基本といっていいのですが、これは当人を知っている人にしか判断できません。雑誌に掲載されたり、画廊に展示されている人物写真を見た時は、その本人が実際にはどんな人なのかはわかりません。
これを逆手にとれば、実際の本人がどんなキャラクターなのかはどうでもよくて、写真のイメージによってだけ、本人のキャラクターが作られるという倒錯の世界になります。
ポートレート作品の起点はここにあります。
現実の本人らしさから離れて、写真のイメージを完成させるために演出していくわけです。ヘアメイク、衣装、ロケーション、ポーズ、演技などによって、虚構の人格を作り上げることができます。言い方を変えると、写真を撮る人が、「こんな感じの人であったらいいな」「こんなふうに見えるのが好き」といった判断でイメージを作っていくのです。
ここに写真を撮る人の価値観が表れます。つまり、女性は女性らしく、といった価値観がある人は、そのようなイメージを作りあげます。ですから自由にやっているようで、実は写真を撮る人の考え方が最も表れるのです。他人を撮影したポートレート写真が写真家の「表現」だというのは、写真家の観念などが写真のイメージに表れるからです。」(148-149)