攻殻機動隊/押井守

2007/8/7
人間が半機械化、ネットワーク化した時代のサイバーテロと、それに立ち向かう機動隊を描いた作品。
舞台背景としての近未来都市が非常に魅力的だった。高層ビルがそびえる大都市の傍らに、香港の下町のようなスラムが広がる。街の様子を描いた部分では、BGMとしてガムランアディエマス風の音楽が流れ、90年代的な無国籍な空気が流れている。
主人公たちが交わす会話も興味深い。「記憶」「情報の海」「サイボーグの脆さ」などをテーマに、機械化した人間の弱さ、息苦しさが語られるが、不思議と悲壮感は感じない。
物語の後半、人形使いは主人公の素子と「融合」する。その目的は、一様化したサイボーグの脆弱性を乗り越えるため、多様な新しい「種」を残すためであると言う。最後のシーンで、人形使いが融合した素子は、新しい少女の体で街に出ていく。
この作品は、BS2の押井守特集で見たが、上映終了後、彼へのインタビューがあった。その中で、押井は映画に対する態度として次のようなことを言っていた。
「映画を「分かる」ということが必要かどうか分からないが、自分は簡単に理解でき、それで終わってしまう映画よりは、見るたびに新たな発見ができるような映画を作っていきたい。」
「ある映画が好きな場合、好きな理由は分からなくても、なぜその映画に魅かれるか考えることを大切にしてほしい。その理由が分かったときは、その映画を卒業するときかもしれないが、卒業することもまた大切だ。」