青い花/ノヴァーリス

2007/7/8-7/28
青年ハインリッヒが旅に出て、さまざまな人と出会い、詩人になる決意をするまでの物語。作者の夢・自然・歴史・詩に対する考えが物語の端々に刻み込まれている。また、ハインリッヒの性格や物語の展開そのものが非常に素直であり、小さい頃に聞いた「おはなし」を感じさせるような好感が持てた。

ハインリッヒにとっての夢

「そんな話をあれこれ持ちだすまでもなく、もしお父さんが生まれてはじめて夢を見るとしたら、きっと愕然となって、日々のありふれた出来事になってしまっている夢にひそむ不思議を、無下に退けることなどされないでしょうに。夢は、規則にしばられた生活や、ありきたりの日常からの防壁となっていて、抑えつけられていた想像がのびのびと気晴らしをする場のように思われますが。なにしろあれこれ思い浮かぶ日常のあらゆる情景が、そこへ投げこまれてごちゃまぜになっています。たとえば四六時中変らない大人の世界の生真面目さが、陽気な子供の遊びで中断されるという具合に。夢がなかったら、ぼくらはきっと早く老けてしまうことでしょう。夢は直接天から授かったものでないにしても、やはり神の贈り物として、聖なる墓に向かう巡礼の親しい道連れではないでしょうか。どうも昨夜みた夢は、けっして偶然ではなく、ぼくの人生に何か関わりがあるものに思われてなりません。なにしろ、大きな歯車のようにぼくの心に食い込み、大きくはずみをつけながらぐいぐい押してくるのですから。」(21-22)