若きウェルテルの悩み/ゲーテ

2007/2/17読了
「忍耐しろ!忍耐を!そのうちにもっとよくなるだろう。まったく君のいうとおりだったよ。毎日世間の人間のあいだを追いまわされて、かれらがすること、またそのする仕方を見るようになって以来、私は前よりずっと自分と仲がよくなった。たしかに、われわれは何事をも自分と比較し、自分を何事とも比較するようにできているのだから、幸とか不幸とかは、けっきょくはわれわれが自分を対比する対象次第のわけだ。
だから、孤独ほど危険なものはない。われわれの想像力は、もともと高きを求めるものであるのに、さらに文学の空想的な幻影に煽られて、しらずしらずに存在の一系列をつくりあげてしまう。そして、自分はその最下位にいるが、自分以外のものはもっとすぐれている、他人は誰でもずっと完全だ、と思いこむ。これは自然の傾向だ。われわれは、自分に多くのものが欠けていることをしきりに感ずるし、自分に欠けているものは他人が持っているような気がするものだ。そればかりではない、自分のもっているものを全部他人に贈物にして、おまけに一種のこころよい理想化までする。このようにして、幸福なる人間像ができあがるが、それはわれわれ自身が描きだした架空の幻にすぎない。」(85〜86)
「おお、神よ、あなたが私にあたえてくださった最後の慰めは苦い涙でした!さまざまの計画、かずかぎりない希望が、心のなかを荒れくるいました。そしてついに、最後の唯一の考えがしっかりと、ゆるぎなく、確立しました。自分は死のう!―それから私は身を横たえました。夜が明けて、目醒めたときのしずかな気持のうちにも、決心はかたくしっかりと胸にありました。自分は死のう!これは絶望ではありません。確信です。自分は堪えぬいてきた、そしてあなたのために犠牲になる、その安心です。」(150)