野良犬/黒澤明

2007/2/17
日本映画に刑事もののジャンルを確立したと言われる映画。秀逸なのは、主人公が盗まれたピストルを追い求め、東京中をさまよう場面。東京の繁華街や盛り場を歩き回る主人公を、当時の流行音楽に乗せて描いている。仮に私が当時生きていたとして、日本の地方か外国でこの映画を見ていたとしたら、「東京」という都市に行きたくてしかたがなかっただろう。あるいは黒澤にとっては、非東京人に対してこの都市の魔力を魅せつけてやることが、この映画の目的の一つだったのかもしれない。
「でも何だかあの遊佐って男のことが」
「その気持は俺にも覚えがあるよ。最初に捕まえた犯人って、妙に忘れられないものさ。しかしね、君が考えてるより、ああいう奴らはたくさんいるんだ。何人も捕まえてるうちに、そんな感傷なんかなくなるよ。」