ファリャ −「クラシック音楽化」されたスペイン−

 ファリャのバレエ音楽『三角帽子』『恋は魔術師』を聴いた。明るい空、怪しげな夜、叙情...。その音楽は誰が聞いたとしても、スペインの色彩を感じるだろう。
 この作曲家はスペインで生まれ育ったのち、パリに出てドビュッシーラヴェルの音楽を学んだ。事実、彼のオーケストレーションには、ところどころ、後期ラヴェルの手法を思わせる響きがある。
 また、ドビュッシーはスペイン風の音楽を作る際、アルハンブラ宮殿の写真などからイメージを膨らませていたというが、その地で生まれたファリャは、もちろんスペインの音楽に深く触れている。そのうえで、一度外国から故国の音楽を客観的に眺め、クラシック音楽の枠組みを使って、スペインの音を再構築しているように思える。ファリャの音楽が、分かりやすく「スペイン的」であり、それでいて決して軽薄な内容でないのは、こうした経験が反映しているはずだ。
 それを、「民俗音楽とクラシック音楽の理想的な結合」ととらえるか、「毒を抜かれた土着性」ととらえるかは、個人の見解にゆだねられる。ただ、以前とある演奏会で聴いた『三角帽子』からは、南国の明るい空は全く感じられなかったことは、追記しておきたい。

ファリャ:三角帽子、恋は魔術師

ファリャ:三角帽子、恋は魔術師