バーンスタインのチャイコフスキー (交響曲第一〜三番)

冬から春の初めにかけて、チャイコフスキーの前期交響曲を鑑賞した。後期の作品群に比べ、民族的な、ロシアの冷氷な大地を思わせる旋律が多く、この季節にぴったり。
それまで聞いてきたドイツ系作曲家の作品に比べ、ロシアの作曲家の音楽は親しみやすいメロディーが多い。チャイコフスキーもその例に漏れないが、それはロシア民謡が日本人に抱かせる感情に近いものだろう。
前期交響曲では民謡を用いた旋律や、打楽器を多用した祝祭的な演出が多用されるが、その音楽には、頭や感情というより、体が反応するような楽しさがある。
一方で、若い時代の作品のせいか、チャイコフスキーが持つクセが露骨に出てしまうことも事実。たとえば、同じ旋律を複数の楽器がリレーする演出は、これらの交響曲に何度も出てくる。そのような音楽の展開に、もの足りなさを感じる人もいるかもしれない。
今回聴いたCDには、交響曲のほか、名作「ロミオとジュリエット」も入っている。それも含め、どの作品も極めて高い完成度を誇るというよりは、その後の傑作の萌芽を聴き取れたように感じた。