バーンスタインのブラームス(交響曲第三番)

F-As-Fの導入の和音から導き出される、堂々とした中にある憂い。この屈折した感情が、作品全体を支配している。
第二楽章はノスタルジー、第三楽章は憂愁の音楽。それは、旋律だけでなく音色からも聴き取ることができ、ブラームスの楽器の使い方のうまさを味わえる部分である。
第四楽章は、暗い情熱的な旋律から始まる音楽。先の三楽章にくらべ、少しつかみどころがない。金聖響氏の文章が、この楽章の印象として面白かったので、作品全体の特徴を述べたものとともに引用しておきたい。

「苦悩から勝利へ」というよりは、むしろ確信に満ちた前進とでもいうのか、長い髭のブラームス爺さんは何やら自分自身に納得しているような趣があります。いろんなことがあった、いろんな騒動が山ほどあった、けれど、これでよかった、これでいいのだ……間違っていなかった……とでもいいたげで、最後は、静かに終わります。
この『第三番』は、すべての楽章が静かに終わるという少々珍しい形になっていますが、そこに不自然さはまったくありません。おそらく聴いている人も、そのことを改めて指摘されないと気づかないくらいでしょう。これほど珍しい形が、これほど自然に聴こえるのは、ブラームスが確信しているからに違いありません。これこそ、自分の表現したかった音楽だと……。(『ロマン派の交響曲』より