あらくれ/成瀬巳喜男

2008/7/16-18
徳田秋声の原作を映画化。大正初期を舞台に、高峰秀子演じる女性が、さまざまな男と出会い別れるという、ありふれていると言えばありふれたモチーフの作品。にもかかわらず、やっぱり当時の名作はいいな、と感じる作品だった。
アマゾンのある詩集のレビューに、「詩がほしくなったときに、この詩集をひも解く」といったものがあったが、もはや古典となった当時の名作は、私にとってその詩集のようなものとなっている。役者の演技や演出もさることながら、映画の撮られた昭和二〇年代、三〇年代のほのぼのとした空気が、そうさせるのかもしれない。
思えば、「文学」が欲しくなったとき、最近は太宰や三島を読み返すことが多い。古典の力は、やはりすごい。