善き人のためのソナタ/フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク

ベルリンの壁崩壊前、84年の東ドイツの秘密警察“シュタージ”の内幕を、監視対象者の物語と織り交ぜて描いています。
元シュタージへのインタビューを4年間重ねて作り上げた作品とのことなので、シュタージの様子はおそらく現実のそれに近いものでしょう。そのような目で見ると、彼らの雰囲気の意外な軽さ、柔らかさに驚かされます。統一前後の社会の変化は政治的・経済的なものであり、日々の生活や感情は、現在のそれとほとんど変っていないのではないかと思います。
また、最後の場面で、元大臣がかつての監視対象であった劇作家に「今は反抗できるものがないから書けないのではないか」と言葉を投げかけます。これは旧共産主義国の芸術家が、共通して持っている問題意識なのかもしれません。

善き人のためのソナタ スタンダード・エディション [DVD]

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