『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する/亀山郁夫

カラマーゾフの兄弟』の翻訳者である著者が、刊行された本の内容や周辺の人びとの証言から、物語の続編を空想するという内容となっています。
続編は、第一部の「父殺し」を拡大した「皇帝暗殺」がテーマとなること、その実行犯はアリョーシャではなくコーリャであることが予想されています。また、続編は構成は第一部とパラレルなものとなり、物語を側面から支える思想的な対立は、鞭身派のコーリャと去勢派のアリョーシャとなるであろうことも書かれています。
これら予想の根拠の一つとして、著者は『カラマーゾフのの兄弟』における「自伝層」の存在を挙げています。それが登場人物の行動や年齢と結びついており、続編にも大きな影響を及ぼすだろうことが主張されます。
私が『カラマーゾフの兄弟』本編を読んだ際には、物語内の思想的場面に圧倒されたことのほか、全編にちりばめられたサディズム的な描写に強く印象を受けました。今回の本ではそれらについてはほとんど扱われていませんが、言及している本があれば読んでみたいと思っています。

『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する (光文社新書)

『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する (光文社新書)