『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記(上)』

2012/9/23読了

人生論

・経験はいつわるものではない。経験にもとづくわれわれの判断が誤るのだ。
・健全な霊魂というものがあるとすれば、それは健全な肉体にやどる。
・感覚を通過しない精神的物質は空疎である。奇跡や魔法や錬金術は、害のほかになんら心理を生み出さない。
・版画は版木に、愛するものは愛する対象によって左右される。対象は、認識されたのち、はじめて知性にとどまる。そして、恋される対象が下劣なら、恋するものも下劣になるのだ。

絵画論

・画家は「自然」を師としなければならない。自然を模倣した絵画を師としてはならぬ。
・「君の描く顔には、髪をして若々しい顔のまわりにかすかな風といっしょにたわむれさせ、さまざまな飜りによってこれを優雅に飾らしめよ。顔を膠でぬりたくり、顔にまるでニスをぬったように思われる人々の真似をするな。」
・「心の情熱を表現する動作が人物にあらわれないかぎり、その人物画は賞賛に値しないであろう。その心の情熱を動作によって上手に表現すればするほどその人物画は賞賛すべきである」
・人物の肢体や動作は年齢にもつりあわなくてはならない。青年は静脈にも筋にも乏しく、優美な肌色をしている。老人は皺くちゃの皮膚、ごつごつして、腱も非常にはっきり見える。
・衣服の皺について。光源や素材により、衣服はそれぞれにことなる皺を持つ。一人の人物画全体を皺で埋めてしまってはならない。それは人物にぴったりあったものでなくてはならぬ。
・太陽に照射された樹木の美、植物の茎や葉の精緻な観察など。

レオナルド・ダ・ヴィンチの手記 上 (岩波文庫 青 550-1)

レオナルド・ダ・ヴィンチの手記 上 (岩波文庫 青 550-1)