第371回定期演奏会 パリ/名古屋フィルハーモニー交響楽団

2010/7/10

ガーシュウィン:パリのアメリカ人

中間部の甘美なトランペットが素晴らしかった。また、強音部の各楽器の主張も良かったと思う。一方で、弱音時、中音時にもそのような主張がほしいと感じた。
以前よりこの曲には「パリ」よりは「ニューヨーク」を感じることが多かった。今回初めて生演奏を聞いた際にもその印象は変わらない。やはり、作曲者の出自を強く印象付ける曲なのだと思う。

プーランク:2台のピアノのための協奏曲ニ短調

プーランクの名前は、村上春樹氏のエッセイで知った。その文章の内容からは、ラヴェルやサティのピアノ曲のような、軽やかな作品を想像していた。
しかし、実際の演奏は古典的な趣があり、やや面食らった感じだった。旋律が分かり易いものではなく、とっつきにくさを覚えることもあったが、ガムランの響きを模したピアノ演奏の部分は、心地よく聴くことができた。

サン=サーンス交響曲第3番ハ短調 作品78『オルガン付』

・第1楽章:アダージョアレグロモデラート、ポコ・アダージョ
前半はポピュラーな旋律が演奏されるが、曲がいったん止み、オルガンが演奏に加わることで、印象は一変する。オルガンが持つ低音の響きによって、音楽的な空間が奥行きを持ってくる。曲は通俗的なものから一足とびに宗教的なものとなる。
・第2楽章:アレグロモデラート―プレスト、マエストーソ―アレグロ
第1楽章同様、前半と後半、オルガンの登場前と登場後で印象が異なる。前半は各楽器がそれぞれの役割を受け持ち、曲に華やぎを添える。一方で後半は、オルガンも含めたすべての楽器が主張を繰り広げる。今回が最後の定期演奏会となる和泉氏のティンパニも強い印象を残した。
二つの楽章を通して、この作品の主役はやはりオルガンなのだと感じた。楽章にオルガンが加わらない前半部を残しておくことで、その効果がより鮮明なものとなる。曲がいったん終始した直後のオルガンの一音は、当時の聴衆にも驚きをもって迎えられたのではないだろうか。