ロリータ/キューブリック

2009/2/5鑑賞
以前、エイドリアン・ライン監督の『ロリータ』を見たことがあったため、それと比較しながらの鑑賞となりました。
(ライン版の日記:http://d.hatena.ne.jp/kaoru4/20070728/1185626940
ライン版で非常に印象に残った「夢のアメリカ」の描写は、キューブリック版では過去ではなく、同時代の描写となります。そこに描かれるポップスや、ハイウェイや、キャンプ場は、撮影当時に使われていたものであり、よりリアルなものとして現われてきます。しかし、今それらを見ても、「夢のアメリカ」は十分感じ取ることができ、当時のアメリカの浮遊した幸福感を感じ取ることができます。
人物描写に関しては、ライン版よりも、より監督の趣向が表れていると思います。頻繁に登場するクィルティはどこかコメディタッチな描写がなされ、ハンバートに関しても、頭だけで恋愛をしようとする気持ちの悪さがよく出ていました。
ナボコフの小説には、翻訳にもよるのでしょうが、ノスタルジアの中にも、奇妙な角度から視点を投げかけてくるようなところがあります。キューブリック版『ロリータ』は、その視点の映像化を、幾分か試しみているようにも感じられました。

ロリータ [DVD]

ロリータ [DVD]