『赤ひげ』 黒澤明

2009/2/11鑑賞
江戸時代の東京を舞台に、施療院の医師である「赤ひげ」と、その周囲の人間たちの様子を描いています。物語全体を通して、主人公である「赤ひげ」よりも、長崎帰りの保本や岡場所の少女の成長にスポットが当てられているように見えます。人の死を扱った場面など、シリアスな表現もありますが、作品には昭和二〇年代の映画のようなのんびりした空気が流れており、爽やかな感動を得ることができました。

舞台美術について

この作品もそうですが、黒澤監督は舞台美術に非常にこだわりがあり、撮影時には見えない箪笥の裏側にまで漆を塗るなど、徹底してセットを作りあげていたそうです。一方、同時代のアメリカなどの映画を見ると、背景が書割であるなど、舞台美術に弱さが見られるものがあります。そのような作品に出合うと、ストーリーが面白いものであっても、どうしても違和感を覚えてしまうのです。
黒澤作品が今でも感動できる理由は、たしかにそのシナリオの素晴らしさにあると思います。それに加えて、舞台美術を含めた演出全体に対する、徹底した「時間のかけかた」こそが、作品に奥行きを与えているのだと思います。

赤ひげ <普及版> [DVD]

赤ひげ <普及版> [DVD]