「ブルース・リー特集」

2010/7/27-29鑑賞
BS2で放映された『燃えよドラゴン』『ドラゴン危機一発』『ブルース・リー 死亡遊戯』を観た。
この時代の映画を観る際の習慣として、どうしても背景の街並みやその表象のされ方に注目してしまうことが多い。今回も『燃えよ』『危機一発』は当時の香港やバンコク郊外の様子を観る楽しみもあると思ったが、そのようなことを気にする必要がないほど、映画自体に魅力があった。
観る前のイメージとしては中華色の強い作品だと思っていたが、登場人物の国籍やアクションのベースとなる武術の多彩さから、無国籍的な様相が強い。また、無敵な主人公やストーリーの単純明快さや黒社会の描写など、60年代の日活無国籍アクションと類似する部分もあるが、銃ではなく肉弾戦で戦闘を繰り広げているため、爽快感もこちらのほうが上だ。
一方で『死亡遊戯』にはある種の切なさを感じる。それは、主演のリーがすでに故人というところから来るものではなく、映画全体に感じる、覇気の少なさなのだ。それはこの映画の製作背景にも原因があるのかもしれないが、時代的なものも関係している。つまり功夫アクションと時代がシンクロしなくなった、そのぎくしゃくしたものを映画全体に感じてしまうのだ。
実際、その後十年ほど、香港娯楽映画はかつての盛り上がりを失うことになる。そして1990年前後から『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』や大陸出身監督による芸術映画、ウォン・カーウァイの一連の作品により、香港映画はふたたび注目を浴びることになる。『死亡遊戯』にはムーブメントを終えた後に、かつての方法論を無理を承知で織り込もうとしているように思える。そしてその試みがそれほど成功しなかった時、言いようのない閉塞感を覚えてしまうのだ。

ディレクターズ・カット 燃えよドラゴン 特別版 [DVD]

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