日本の不思議な宿/巌谷國士

2007/11/27-12/28
筆者が旅先で出会った「不思議な宿」について記したエッセイ集。ちなみに、筆者にとって不思議な宿とは、「一見ふつうであり、正統的・伝統的なものであっても、こちらの感覚が微妙に反応して、いわくいいがたい驚きをよびさまされる」(312)ような宿である。
筆者はそのような宿、そして街を歩き、独特の視点から印象を書き記している。たとえば、宝塚ホテルに泊まり、宝塚歌劇団の舞台を見た際には、次のような内容を記している。
タカラヅカは夢の現実化であるとよくいわれる。はたしてそうか、とおもった。夢は夢でもそれはパターン化された教育的な夢のカプセルの羅列であって、なにかバロックなところ、過剰でハチャメチャなところがあまりないようだ。むしろ夢とはこういうものですよ、というパターンを、観客はひたすらおとなしく教えられてたのしんでいるのだという気がしないでもない。」(55-56)