唐草物語/澁澤龍彦

2007/3/5-3/31
金色堂については、私がわざわざ舌足らずの感想を述べるほどのこともあるまい。昭和四十三年に完了した解体修理作業によって、堂はすっぽりガラスのスクリーンで隔離密閉されることになったが、隔離密閉される以前の堂を私は見ていないので、もちろん以前の状態と比較したりすることはできない。これはこれで、私には十分に美しく見えたし、期待を裏切られることもなかったといっておこう。むしろかえって、透明なカプセルのなかに密封された、精緻をきわめた極楽浄土のミニアチュール、内陣のきらびやかな須弥檀や巻柱や仏像や七宝螺鈿が、超時代的な異様な美に荘厳されたような印象さえいだかせられたのである。」(127)