ロシアのクリスマス物語

19世紀後半から20世紀前半にかけて発表された、ロシアの作家達のクリスマス物語を収録しています。
温かい、道徳的な話が多いのかと思いきや、皮肉の利いた話なども多く、作品によってクリスマスの捉え方に違いがあるところも興味深いです。
ただ、やはり印象に残るのは、モスクワの老婆が故郷の田舎町のクリスマスの様子を懐古的に書いた、シメリョフの『クリスマス』でしょう。かつてあった時代を懐かしむ視点からは、私自身の子供時代の故郷の様子が想像され、ストレートに感動できる短編となっています。
実はこの作家の本は、90年代に古きロシアへの懐古趣味によって版を重ねていたそうです。そして、この『ロシアのクリスマス物語』事体も97年初版発行であり、表紙のイラストもどこか懐かしいものとなっています。私がこの本を読もうと思ったのは、そのような懐かしさに触れたいと考えたから、でもあるのです。
クリスマスくらいは、今を生きずに、過去の幸せだった時代を(それが幻想だったとしても)懐かしんでみたいものです。

ロシアのクリスマス物語

ロシアのクリスマス物語