キャッチャー・イン・ザ・ライ/サリンジャー

2008/3/19-3/30
高校を中退した主人公が、ニューヨークの実家に戻るまでの数日間を、彼の行動を追いながら描く。
主人公が、自分がそこをあとにすることを実感するためにフットボールの試合を見下ろす場面や、安物のスーツケースをもつシスターを見て落ち込んでしまう場面、子供が歩道の縁に沿って歩きながら歌う歌を聴いて気持ちが晴れる場面などに、思春期特有の微妙な感情や、みずみずしい自意識が感じられて面白い。
「ところがさ、僕は学校ってのが大嫌いなんだ。うん、とことん嫌いだ」と僕は言った。「でも学校だけじゃないんだ。すべてについてそうなんだ。僕はすべてのことに我慢できないんだよ。ニューヨークに住むこととかね。タクシーだとか、マディソン・アベニューのバスだとか。後ろのドアから降りてくれって運転手がしょっちゅう怒鳴りまくっているやつのことさ。それからラント夫妻のことを神の使いと呼ぶようなインチキな連中に紹介されるとか、ただ外に出たいだけなのにエレベーターで上にやられたり下にやられたりしなくちゃならないとか、ブルックス・ブラザーズでしょっちゅうズボンの丈を測られることとか、それからいつだって――」(220)