国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア/Bunkamura ザ・ミュージアム

2009/5/26鑑賞
近代のロシア絵画の展覧会となりますが、均衡のとれた西欧の絵画とはまた違った、素朴な魅力や親しみやすさがあります。今回は以下の絵葉書を購入しました。
≪愛の告白≫ ウラジーミル・マコフスキー
ロシアの室内画に親しみやすさを覚えるとすれば、それは家具や調度品にあると思います。美しい装飾が施された西欧のそれに比べ、テーブルや椅子は無装飾の簡素なものであり、床も絨毯敷きではない、シンプルな板の間です。それがかえって、日本人にとって親しみやすい室内空間を作り出していると思います。
≪モスクワの中庭≫ ワシーリー・ポレーノフ
ロシアの風景画の特徴は、低く淡い色の空と、明るく透明な空気感、それによって醸し出される、冷たく清涼な印象ではないでしょうか。この絵などによって再現されるそれは、明るくさわやかで、それでいてどこか寂しげな北国の印象を、筆致によって伝えてくれます。
≪恋のライバル≫ ニコライ・カサトキン /≪五月の花≫ ヴィクトル・ポリソフ=ムサートフ
肖像画以外の人物画においては、人物と同じくらい周辺の自然が丁寧に描写されます。自然を征服対象ではなく、その中で生きるものと考える、ロシアの庶民の生活ぶりが窺われます。
≪忘れえぬ女(ひと)≫ イワン・クラムスコイ
トレチャコフ美術館のなかでも、もっとも人気の高いこの絵画ですが、技法的にポートレイト写真の「ボケ」を使っているのがわかります。この手法を取り入れている絵画は他にほとんどなく、絵の人気は技術の勝利と言えるのではないでしょうか。あるいは、この女性に対する強い思いが、このような描写の方法をも思いつかせたのかもしれません。