とことん!押井守

8月前半にBS2で放映していた押井守特集のうち、前述の攻殻機動隊に続いて4作品を視聴した。
作品のあとに放送された監督自身によるコメントとともに、印象に残った点を記しておく。
・『天子のたまご』
内容自体はよく分からないものだった。ただし、放映後の押井へのインタビューでは「偽者の宗教をでっち上げる。内容自体が分からなくても、訴えるものがある作品を作る」と言っていた。宗教の持つ「畏れ」を描いた作品だと思う。
・『機動警察パトレイバー the Movie
コンピューターウイルスに感染したレイバーの暴走を題材にした作品。
この作品で押井は、妄想を実体化する、世界観を確立するためのロケハンや、想像とロケハンの統合としてのレイアウトなど、映画作成の方法論を確立したと言っていた。また映画で描いた、人間のいない、都市そのものしかない街、それは東京であるとしている。
・『機動警察パトレイバー 2 the Movie』
一発の爆弾と情報の撹乱により、戦争状態が演出された東京を描いた作品。劇中の「なりふりかまわぬ平和、それを守るのが俺たちの仕事さ」という台詞が印象に残る。
インタビューでは、一作目はアクションであり二作目はポリティカルフィクション、戦争のない戦争映画(=現実の戦争)、日常に突如現れる戦争状態という非日常をこの作品では描いた、またパトレイバーシリーズ全体について、警察を通して犯罪者を描いてきたが、その目的が映画二作目で達成されたため、シリーズはこれで最後になった、と言っている。
・『イノセンス
攻殻機動隊』の後日談となっている。内容そのものよりは、その映像に注目されるべき作品だと思う。押井は映画の中で都市描写に一定時間を費やすことが多いが、択捉経済特区の祭日の描写はそれまでのものとは別格の凄みがあった。きらびやかで退廃的な世界はアニメーションだからこそ実現できるものであり、この媒体で作品を作ることの可能性を感じさせてくれる。