ザ・風景 変貌する現代の眼/名古屋ボストン美術館

2010/7/18鑑賞
「表象」というものは、私が美術を鑑賞するときに、常に意識に抱いていることだ。
今回の展覧会は、まさに風景の表象のされ方を扱ったものであり、表現方法はある程度予想されるものだろうか、という思いもあった。しかし、鑑賞後の印象として、予想を越える、意外な表象方法に出会えたと感じる。
≪運動場#1≫ ジョエル・ジャノヴィッツ
少年時代の心象風景を描いたような作品。一見、日本の郊外の風景かと思ってしまう。このようなありふれた光景にノスタルジアを抱く心理は、現代特有のものであろうか。
≪大風、向かうべきか屈すべきか≫ ロバート・フェランディーニ
仰々しいタイトルとは逆に、旅行時に撮影した、失敗した観光写真のような構図であった。しかも絵から受ける古風な印象とは逆に1991年の作品だという。このような逆説的なところに、アイロニカルなユーモアを感じる。
≪海の風景≫ ロイ・リキテンスタイン
中国の山水画のモチーフを、ポップアートの技法を用いてえがいた作品。海を青のドットで表し、矮小化された小舟が浮かぶ。古典絵画のこのような解釈は、素直に面白いと思う。
≪マディソンを望む≫ ベン・アロンソ
一瞬、写真かと思ってしまうが、近づくと絵であることが明らかになる。ホテルの一室から見えた、朝の光の一瞬の情景を描いた作品。2005年の制作だが、この作品になぜか非常に現代的なものを感じた。
≪サンクトンズ・リバーⅡ≫ エリック・アホー
雪の中を流れる小川を映画いた作品。光の反射を、淡い緑やピンクで表現している。それでいて、非常にリアルな情景である。私たちは「雪=白」という固定観念を抱いているが、実際の自然の色は、光により緑やピンクが混じるものかもしれない。そのような考えを抱かせる、2008年の非常に新しい作品である。